人間の持つ複雑な感情や矛盾を鋭くえぐり出した物語でした。登場人物たちはそれぞれ、自己中心的な部分と優しさを抱えながら生きていて、そのバランスがリアルに描かれています。タイトル通り、傲慢さと善良さがぶつかり合う中で起こるドラマに引き込まれ、誰もが完璧じゃないということを改めて感じさせられました。重たいテーマながらも、登場人物たちの人間らしい姿に共感できて、読み終わった後も考えさせられる作品です。
心が血だらけになるくらい刺されてめちゃくちゃ面白かった。善良に生きた結果、減点をしない生き方になり、自分が傷つく選択はしないので、同時に自己愛は増大してしまう。傲慢さと善良さが1人の心に共存してしまう不思議な時代。
人は人生の大切なものを選ぶ時、「この人は違う」「あの会社は違う」と、自分の得点を異様に高く見積もってしまう。うん、心当たりありすぎるな…。
ただ、真実を見ていて思ったことは、「自分の人生を自分で選んできた」という盛大な勘違いが自分にはあることが、多少の救いなのかもしれない。"なんとなく選択を流されなかった"という自信だけが、この先も自分を信じることができ、このような小説を読んでも笑っていられる自分にしてくれたのかも。最後の真実と同じように。
心につき刺さる!!
この作品は、恋愛小説なのか、ミステリー小説なのか、読んでる途中に考えていた。
しかし、読み終えてみると、もっと大きなくくりの小説なんだと思った。
何気なく生活している中で、人それぞれの考えがあり、悩みがある。そんなことを明らかにして、読み手に突きつけてくる。特に恋愛や結婚ということになれば尚更かもしれない。自分の本当の気持ちを明らかにせざるを得ないよと、問いかけられた気がした。
坂庭真実が逃避先で「私も行けるかな、次の場所」とつぶやいた。
つい「行けるよ」と言いたくなった。
解説が朝井リョウというのもおもしろい。
辻村深月を読むのは、『ツナグ』に続いて2作目になる。まだまだ読み足りない気がしている。
辻村深月さんの『傲慢と善良』は、ただの恋愛小説ではなく。人間の内面に潜む「傲慢さ」と「善良さ」という相反する感情に鋭く切り込んだ、心理小説のように感じた。
婚約者・真実が突然姿を消すところから始まり彼女を探す架の視点で進む前半と、真実自身の視点で描かれる後半。視点が変わることで、同じ出来事がまったく違う意味を持ち始める構成が面白く「事実は一つでも、真実は人の数だけある」という言葉を思い出した。
この作品を読み終えたとき、私は「自分の中の傲慢さと善良さ」に目を向けるようになった。人を理解することは簡単ではない。けれど、まずは自分を知ることから始めようと思えた。そんな気づきを与えてくれた一冊だった。
もうすぐ結婚をひかえている、ある2人の恋人の物語
登場人物は真実と架、ある日突如居なくなった真実
それを必死に探す架の話。探しているにつれ、真実の抱えていた悩み、真実と関わりのある人物、家族、友人、そして架自身、自分たちが真実を悩ませてしまったこととは何だったのか。この物語を読んだ時、自分もまた周りの人に同じことをしていないか考えさせられた。良き成長を施す物語となっている。


















