ガリレオシリーズの第10弾にして長編では第5作目にあたる作品です。かねてからの大ファンなので買わない選択肢などありませんでした。
シリーズの中では一番、時間を感じる作品です。
個人的に漫画と同じく、年を取らないイメージのある小説の登場人物たちですが、時間とともに老いを痛感させられます。
そして、今作の大切なカギは『家族』
今まで明かされていなかった湯川の真実も公開されます。変人ゆえに、人間らしさというものを想像しにくかった湯川の新しい一面を知ることが出来るでしょう。
それにしても、年を重ねたからなのか経験を積んだからなのか、変人ガリレオが随分丸くなった印象でした。
物語の事件は1人の男性の死体発見からはじまります。
アリバイがあるはずの同棲していた女性は失踪し、行方知れずに……
果たして女性は何処へ行ったのか? なぜ逃げる必要はないのに逃げたのか? と謎が深まるばかりです。
今回は、物理云々よりも純粋な推理を楽しめる作品です。
愛する人を守る事は罪なのか? をテーマに、やや重く悲しい物語が紐解かれていきます。
“真実”は1つでも“正義”は1つではないと、どこかで聞いたことがありますが、正にその通りだと実感するでしょう。
知らなくて良いこと、知っておいたほうが良いことというのは、人それぞれ違うのだと分かります。