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『ザ・ロイヤルファミリー』は、競馬を題材にしながらも、単なるスポーツ小説にとどまらず、人間の夢、執念、そして家族の再生を描いた重厚な物語である。読み進めるうちに、競馬という世界の奥深さと、そこに生きる人々の熱い思いに心を揺さぶられた。
主人公・栗須栄治は、父の死をきっかけに空虚を抱えながらも、競馬場での偶然の出会いから「ロイヤルヒューマン」の社長・山王耕造の秘書となる。山王は〈ロイヤル〉の名を冠した競走馬で有馬記念制覇を夢見る男であり、その夢に栄治は巻き込まれていく。彼らの関係は、単なる雇用主と秘書ではなく、夢を共有する同志へと変化していく。
本作の魅力は、登場人物たちの「不完全さ」にある。山王は豪快で情に厚いが、家族との確執を抱え、栄治もまた父との関係に葛藤を抱えている。彼らの弱さや迷いが丁寧に描かれているからこそ、読者は彼らに共感し、物語に深く入り込むことができる。
特に印象的だったのは、「夢を継ぐこと」の意味を問い直す場面だ。競馬という世界では、馬主、調教師、騎手、そして馬に至るまで、すべてが「継承」の連鎖の中にある。勝利だけでは














