タイトルを見て、シリーズものの中華風ファンタジーかな? と手に取りました。
麗しい表紙から美しい「彩雲国」絵巻を想像し、裏表紙のあらすじを読むと、主人公たる秀麗が巻き込まれるのは意外にもコメディのような展開。
そのギャップに惹かれ、冒頭をはらりとめくると彩雲国が作られた際の国語りが。
背景にある壮大な世界観を想起し、すでにわくわくしながら読み進めました。
物語の主人公は良家の姫でありながら、貧乏ゆえにたくましく育った秀麗という少女。
頼りない王・劉輝によって傾きつつある彩雲国のため、秀麗が妻として後宮入りすることになったのです。
庶民的な秀麗の視点から描かれる王朝の様子はとてもきらびやかで、美しく高貴な世界に浸ることができます。
そしてそんな華やかさの裏で、王を改心させるべく秀麗は奮闘するハメに。
持ち前のガッツでドタバタ展開を乗り越えていく様が爽快なタッチで描かれ、いつの間にか物語の世界に没入してしまいます。
「いつの世も妻は強し!」を感じさせる展開ですが、水面下では怪しい動きも巻き起こります。
後宮の人々が何を思い、どんな動きをしているのか、背後で動いているのはいったい誰なのか?
そんなミステリー要素もあり、物語に散りばめられた伏線から、謎を読み解くのも楽しみのひとつとなっています。
作品全体を通して軽妙な文体でサクサク読み進められるので、ぜひ気軽に手に取ってほしい一冊です。