「英雄の都」オラリオが一丸となって絶望に抗う姿だ。これまで個々に描かれてきたファミリアや冒険者たちが、垣根を越えて共闘する展開は、まさにシリーズの集大成とも言える。とくに、ヘスティア・ファミリアの面々がそれぞれの役割を果たしながら、ベルを支える姿には胸を打たれた。
また、戦闘描写だけでなく、各キャラクターの心理描写も深く掘り下げられている。アイズの葛藤、リリの責任感、ヴェルフの職人魂など、それぞれの“戦う理由”が丁寧に描かれており、読者は彼らの選択に自然と共感していく。特に印象的だったのは、「私ができた。なら、貴方もできる」という言葉に象徴されるような、希望と信念の連鎖だ。
600ページを超えるボリュームながら、物語のテンポは緩むことなく、読者を最後まで引き込む。絶望の深層に挑む者たちの姿は、単なる冒険譚を超えて、「人が人を信じる力」「仲間と共に歩む勇気」を描いた人間ドラマとして心に残る。
第21巻は、これまでの積み重ねが報われる巻であり、次巻への期待を高める“熱”を持った作品だった。ベルの物語は、まだ終わらない。だが、ここに至るまでの彼の歩みは、確かに“英雄譚”として刻まれたと感じる。



















