黒地に蝶々の舞う表紙が美しい本作は、「作家アリスシリーズ(火村英夫シリーズ)」の長編です。
探偵役は大学で准教授の職に就き、犯罪社会学を専攻している火村英夫。
ワトソン役は大学時代から火村の友人である推理作家の有栖川有栖(アリス)。
火村は研究のためのフィールドワークとして事件現場に赴き、警察が頭を捻る事件の場合には解決の糸口を見つけていきます。
この基本設定を押さえておけば、どの作品から入っても大体大丈夫なはずです。
『狩人の悪夢』では、アリスが人気ホラー作家の白布施の誘いで、彼の家を訪問した翌日に事件が発生します。
今は亡き白布施のアシスタントが住んでいた家で、アシスタントのことを訪ねてきた女性が死体となっていたのです……
その死体からは右手首が切断されており、他にも不可解な点が次々に出てきます。
アリスや警察の要請でやってきた火村が、この事件は「散らかっている」と評した通り、
事件に関するあれこれの要素が上手に繋がりそうにないので、私は謎解きの段階まですっきりしない気分のままでした。
もちろん最後には、火村が事件の様相を整理整頓して提示してくれます。
計算され尽くした事件の謎がロジックで解き明かされるのはもちろん面白いものですが、
今回のようにかなり散らかってしまった事件の謎を追いかけるのも楽しいものだと感じました。
それからこのシリーズは火村とアリスのやり取りも楽しくて好きなのですが、
本作は悪夢がテーマになっていることもあり、いつも以上にアリスが火村を気遣うシーンも多かったように思います。
火村の悪夢の話について明かされる時は来るのでしょうか…??