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「信じていたものが一瞬で崩れる」感覚に襲われた。結城真一郎の『#真相をお話しします』は、5つの短編からなるミステリー集だが、どの話も日常の中に潜む“違和感”を丁寧に描き、最後に読者の予想を裏切ってくる。
「惨者面談」では、家庭教師の面談に訪れた青年が感じる微妙な空気が、やがて恐怖へと変わっていく。読者は彼の視点で物語を追いながら、少しずつ「何かがおかしい」と気づき始める。そして明かされる真相に、思わずページをめくる手が止まった。
また、「パンドラ」では、不妊治療をテーマにした夫婦の物語が描かれるが、そこに潜む“もう一つの真実”が明かされたとき、私は思わず息をのんだ。人はどこまで真実を知るべきなのか、知らないままの方が幸せなのか――そんな問いが胸に残った。作品の魅力は、単なるどんでん返しではなく、現代のSNSやマッチングアプリ、リモート飲み会など、私たちの身近な世界を舞台にしていることだ。だからこそ、リアルに読者自身も「自分だったらどうするか」と考えさせられる。
『#真相をお話しします』は、ミステリーとしての完成度はもちろん、人間の弱さや欲望、そして“語られない真実”の重さを描いた作品だと思う。読後、私は「真相」とは何かを考え直し、物事を一面だけで判断しないようにしたいと感じた。













