ケアの倫理とは?現代に必要な視点を学べるおすすめ本特集
「ケアの倫理」とは何か、そんな疑問を抱いたことはありませんか?現代社会で重要性が増しているケアの倫理、しかし具体的にはなかなかイメージしにくいですよね。そこで今回は、ケアの倫理について学べるおすすめの本をピックアップしました。著者自身がケアの現場で培った経験と深い洞察力を基に、我々が置かれた複雑な情況について考えるためのヒントを教えてくれる一冊です。生々しい描写と共に、読者に対して深い問いを投げかけることで、自己と他者との関係性を見つめ直すきっかけを提供してくれます。ケアの現場はもちろん、何かと忙しい現代生活の中での人間関係にも役立つ一冊ですよ。
『ケアの倫理とエンパワメント』
自己と他者の関係性としての〈ケア〉とは何か。
強さと弱さ、理性と共感、自立する自己と依存する自己……、二項対立ではなく、そのあいだに見出しうるもの。ヴァージニア・ウルフ、ジョン・キーツ、トーマス・マン、オスカー・ワイルド、三島由紀夫、多和田葉子、温又柔、平野啓一郎などの作品をふまえ、〈ケアすること〉の意味を新たな文脈で探る画期的な論考。
本書は、キャロル・ギリガンが初めて提唱し、それを受け継いで、政治学、社会学、倫理学、臨床医学の研究者たちが数十年にわたって擁護してきた「ケアの倫理」について、文学研究者の立場から考察するという試みである。(中略)この倫理は、これまでも人文学、とりわけ文学の領域で論じられてきた自己や主体のイメージ、あるいは自己と他者の関係性をどう捉えるかという問題に結びついている。より具体的には、「ネガティブ・ケイパビリティ」「カイロス的時間」「多孔的自己」といった潜在的にケアを孕む諸概念と深いところで通じている。本書は、これらの概念を結束点としながら、海外文学、日本文学の分析を通して「ケアの倫理」をより多元的なものとして捉え返そうという試みである。(本書「あとがき」より)
作者 | 小川 公代 |
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価格 | 1650円 + 税 |
発売元 | 講談社 |
発売日 | 2021年08月30日 |
『世界文学をケアで読み解く』
現代人が失いつつある〈ケアの倫理〉は、世界の文学に読みとれる。『ケアの倫理とエンパワメント』で政治、社会、医療、介護の分野からも注目される英米文学者の〈ケアの倫理〉にかんする画期的な問いかけ。自立を迫る新自由主義的風潮のもと、ケア思想をたどり、韓国、欧米、日本などの文学作品とつなげて読み込む。マン・ブッカー国際賞受賞作家の韓国のハン・ガンが描く『菜食主義者』、光州事件をあつかった『少年が来る』。欲望や怒り、憎悪などの暴力に振り回されながらも、どのようにその世界から抜け出せるのか。ブッカー賞受賞作家、カナダのアトウッドがSF的想像力で生み出した『侍女の物語』と『誓願』でのサバイバルとは? このディストピア小説の舞台である「ギレアデ」共和国は不可視の世界で、キリスト教原理主義と家父長制が支配する。そして一人の女性の苦悩が女性たちの連帯(シスターフッド)と結ばれ、「他者」の言葉の力、生存する力がしめされる。差別により死にいたらしめられる者とその過酷さを知らぬ者、老いを経験する者と年若い者、病に臥す者と健康な体を持つ者、はたしてこのような差異を乗り越えて他者の傷つきや死を、私たちは凝視できるだろうか。死者へのケアをテーマにした、トニ・モリソン『ビラヴド』、平野啓一郎『ある男』、石牟礼道子『苦海浄土』、ドリス・レッシング『よき隣人の日記』をもとに、他者への想像力を働かせることがどのようにケア実践につながるのかを考える。冷たい墓碑や硬い土に埋葬されている死者。かつては生命力に満ちていた身体と内面世界が、作品のなかで豊かな言葉によって回復されている。〇目次今こそ〈ケアの倫理〉について考えるーー序論にかえて 第一章 現代人が失いつつあるものとしての〈ケア〉 第二章 弱者の視点から見るーー暴力と共生の物語 第三章 SF的想像力が生み出すサバイバルの物語 第四章「有害な男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)」に抗する文学を読む 第五章 死者(ビラヴド)の魂に思いを馳せるーー想像力のいつくしみ 口をつぐむこと、弱くあることについてーーあとがきにかえて
作者 | 小川公代 |
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価格 | 1870円 + 税 |
発売元 | 朝日新聞出版 |
発売日 | 2023年08月07日 |
『ケアする惑星』
他者なるものを慈しむ、惑星的な視座。
『アンネの日記』、『おいしいごはんが食べられますように』、ヴァージニア・ウルフ、オスカー・ワイルド、ジェイン・オースティン、ルイス・キャロル、チャールズ・ディケンズ……。
『ケアの倫理とエンパワメント』で注目された英文学者が、ケアをめぐる現代の事象を文学と自在に切り結び語る論考。
目次
1章 ”ケアする人”を擁護するーー『アンネの日記』再読
2章 エゴイズムに抗するーーヴァージニア・ウルフの『波』
3章 オリンピックと性規範ーーウルフの『船出』
4章 ウルフとフロイトのケア思想 1--『ダロウェイ夫人』における喪とメランコリー
5章 ウルフとフロイトのケア思想 2--『存在の瞬間』におけるトラウマ
6章 ネガティヴ・ケイパビリティーー編み物をするウルフ
7章 多孔的な自己ーーアートと「語りの複数性」
8章 ダーウィニズムとケア 1 --『約束のネバーランド』と高瀬隼子作品
9章 ダーウィニズムとケア 2--ウルフの『幕間』
10章 ピアグループとケアーーオスカー・ワイルドの『つまらぬ女』
11章 カーニヴァル文化とケアーールイス・キャロルの『不思議の国のアリス』
12章 格差社会における「利他」を考えるーーチャールズ・ディケンズの『ニコラス・ニクルビー』
13章 戦争に抗してケアを考えるーースコットの『ウェイヴァリー』とドラマ『アウトランダー』
14章 ケアの倫理とレジスタンスーーオースティンの『レイディ・スーザン』と映画の『ロスト・ドーター』
あとがきーーケアと惑星的思考
作者 | 小川 公代 |
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価格 | 1760円 + 税 |
発売元 | 講談社 |
発売日 | 2023年01月26日 |
『翔ぶ女たち』
明治から昭和にかけて活躍した小説家・野上弥生子。
語学力や教養やケア実践を、彼女はその先駆的な仕事にどう活かしたのか。
「ケア」をテーマに研究を続けてきた英文学者の「私」が弥生子の人生に惹かれた理由とは。
文学、映画、アニメ、音楽……現代の表現者たちの言葉をつなげて語る斬新な評論。
ロングセラー『ケアの倫理とエンパワメント』『ケアする惑星』著者の最新作。
【目次】
1章 言葉の森を育てた女たちーー松田青子と野上弥生子
2章『エブエブ』と文学のエンパワメントーー辻村深月と野上弥生子
3章 魔女たちのエンパワメントーー『テンペスト』から『水星の魔女』まで
4章 ザ・グレート・ウォーーー女たちの語りに耳をすます
作者 | 小川 公代 |
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価格 | 1760円 + 税 |
発売元 | 講談社 |
発売日 | 2024年05月30日 |
『ケアを描く 育児と介護の現代小説』
長らく家庭というとじた領域で、主に女性によって担われてきたケア労働。介護の外部化や男性の子育て参加など状況は大きく変わりつつあるものの、密室育児や介護施設での虐待など、依然として問題は山積している。そのような、揺れるケアの現場を、フィクションはどのように描いているのか。小川洋子・多和田葉子・角田光代・三浦しをん・辻村深月・桐野夏生・金原ひとみなどを中心に、〈ケア〉というキーワードから現代小説に新しい光をあてる一冊。
はじめに──〈ケア小説〉から見えてくるもの/佐々木亜紀子・光石亜由美
1 育児をめぐる〈ケア小説〉──〈母〉と〈父〉の多様性
第1章 〈母親になろう〉とする母子たちの物語──角田光代『八日目の蝉』/光石亜由美
コラム1 ママ友たちのカースト──桐野夏生『ハピネス』『ロンリネス』/崔正美
コラム2 〈イクメン小説〉のなくなる日──川端裕人『ふにゅう』・堀江敏幸『なずな』/光石亜由美
第2章 ケア小説としての可能性──三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』/米村みゆき
コラム3 定型化された「家族」のイメージを批評する──是枝裕和監督『万引き家族』など/米村みゆき
コラム4 「夫婦を超え」ていくには──ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』/飯田祐子
第3章 弱さと幼さと未熟さと──辻村深月「君本家の誘拐」『冷たい校舎の時は止まる』/古川裕佳
コラム5 「毒親」の呪縛と「毒親」離れ──姫野カオルコ『謎の毒親──相談小説』/光石亜由美
第4章 家政婦が語るシングルマザー物語──小川洋子『博士の愛した数式』/佐々木亜紀子
コラム6 出会いを生きる子ども──小川洋子『ミーナの行進』など/佐々木亜紀子
コラム7 アウトサイダー・アートをめぐる小説──村上春樹『1Q84』・小川洋子『ことり』/佐々木亜紀子
2 介護をめぐる〈ケア小説〉──高齢者・障がい者・外国人
第5章 ケアと結婚と国際見合い──楊逸「ワンちゃん」『金魚生活』/尹芷汐
コラム8 外国語を話す家族たち──温又柔「好去好来歌」/尹芷汐
第6章 ディストピアの暗闇を照らす子ども──多和田葉子「献灯使」/磯村美保子
コラム9 ワンオペ育児者は逃げられない──金原ひとみ『持たざる者』/磯村美保子
コラム10 家族介護をどう描くか──水村美苗『母の遺産──新聞小説』/山口比砂
第7章 新しい幸福を発見する──鹿島田真希『冥土めぐり』/飯田祐子
コラム11 障がい者の恋愛と性と「完全無欠な幸福」──田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」/飯田祐子
コラム12 心の中はいかに表象されるのか──東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』/米村みゆき
あとがき/米村みゆき
作品名索引
作者 | 佐々木亜紀子/光石亜由美/米村みゆき |
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価格 | 2200円 + 税 |
発売元 | 七月社 |
発売日 | 2019年04月08日 |
ここまで、あらゆる視点から「ケアの倫理」に踏み込んでみました。人間関係におけるケアの大切さ、社会全体が抱える問題とケアの関連性、そしてあるいは哲学的な視点から見たケアの存在意義。さまざまな角度から考えることで、より深く、より広い視野でこのテーマを理解することができるのではないでしょうか。
かつて人間が生きる上で必要だった「ケア」の概念が、現代においてはどのように評価され、どのように捉えられるべきなのか。この主題を掘り下げた作品たちは、それぞれが持っている独自の視点から、私たちに多くの洞察と示唆を与えてくれます。
繰り返し強調しますが、これらの作品で出てくる「ケアの倫理」の考え方は、社会が抱える問題を考え、自分たちの生き方を振り返るためのひとつの参考に過ぎません。人間が他者と共生する上で「ケア」がどう働くか、そしてそれがもたらす影響は、時と場所、状況により大きく変わるものです。
だからこそ、この作品たちを通じて「ケアの倫理」について考えることは、自身の人間関係や社会との向き合い方を模索するための一助となるでしょう。そして、そこから得られる新たな見識や考えが、自分自身の行動に変化をもたらすきっかけになるかもしれません。
それぞれの作品が持つ人間の心理描写や社会に対する鋭い視点をぜひ一冊一冊味わってみてくださいね。毎日の生活の中で、あるいは社会全体で起きている出来事の中に、ケアの倫理がどのように働いているのかを感じ取ることができると思います。
それでは最後に、あなたが「ケアの倫理」を見つめ直す、その一歩が素晴らしい旅となることを心から願っています。あなたの社会観、人生観が豊かになることでしょう。
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