林望『謹訳 徒然草』は、吉田兼好の『徒然草』を丁寧に現代語訳した一冊で、原文の趣やリズムを尊重しつつ読みやすさを追求している。兼好の観察眼や人生哲学、日常生活への洞察が随筆として生き生きと伝わり、古典文学の美しさと深みを同時に味わえる構成になっている。文章の趣味や思想の奥行きを現代読者に体感させる、示唆に富む一冊だった。
【「はじめに」より】
『徒然草』は、高校の教科書にも必ず出ていて、
どなたも少しは読んだことがおありであろうと思う。
『枕草子』と並んで、随筆文学の傑作として、
古今の名著とすべきものであることは当然であるが、
といってやはり、なかなか全部を通読した人はそんなに多くはないかもしれない。
ひと続きの長い物語ではないから、かならずしも巻頭から巻末まで
通読する必要もなく、気の向いたときに随時任意のページを開いて散読するのもよい。
しかし、読み始めると、つい次の段も読んでみようかという気になって、
いつの間にか読み耽ってしまう、それがこの本の卓抜なる力である。
(「はじめに」より)
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とにもかくにも、虚言の多い世の中である。
されば、嘘などは常にある珍しくもないことと思っておけば、
万事間違わぬことであろう。
およそ人はこぞって、自分にとって縁遠いことばかりを好むように見える。
改めても益のないことは、改めないのを良しとするのである。
名声や利欲に振り回されて、閑かな暇もなく、
一生をあくせくと苦しめて終るのは、それこそ愚かなことだ。
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