『老子 無知無欲のすすめ』は、老子の思想を現代的に解釈し、無欲・無為の生き方の価値を説いた一冊です。知識や欲望にとらわれず、自然の流れに身を任せることで心の平穏を得る考え方が具体的に示されています。シンプルながら深い哲学が日常生活に応用でき、過剰な競争や焦りに悩む現代人にとって、精神の安定や柔軟な生き方を学ぶ手助けとなる、示唆に富んだ実践的な指南書でした。
『老子』は、『論語』とならぶ中国の代表的な古典である。その思想は、人間はその背後に広がる自然世界の万物のなかの一つであるという自然思想の立場をつらぬくことにある。したがって老子は、人間の知識と欲望が作りあげた文化や文明にたいして懐疑をいだき、鋭く批判する。無知無欲であれ、無為であれ、そして自然に帰って本来の自己を発見せよ、という。中国思想研究の第一人者が説く老子の精髄。
「素朴な自然に対立するものは、人間的な作為であり技巧であり、また、それによって積みあげられていく文化である。自然思想としての老子では、人間が作りあげた文化やあるいは文明とよばれるものに対する、懐疑ないしは批判の心が強い。
「五色をまじえた色彩は、人の目をくらませる。五音をまじえた音楽は、人の耳をだめにする。五味をまじえた料理は、人の味覚をそこなう。乗馬や狩猟の歓楽は、人の心を狂わせる。手にはいりにくい珍品は、人の行動を誤らせる」(第十二章)。
手のこんだけばけばしい作りごと、そして貴族たちの贅沢な嗜みは、人としての純朴な本来性をそこなうだけだという。人間の人間らしさというものは、立場を変えていえばそうした手のこんだ文化を作りあげるところにこそあるともいえる。現に儒家の人びとはそう考えて、礼楽の文化主義をつらぬいた。文化の恩恵を受けて育ってきた現代のわれわれも、どちらかといえば文化の礼讃にまわって、文化の発展のために寄与したいと願うのがふつうであろう。しかし、老子は反対であった。
文化とは何かというその本質を、老子は見究めたのである。」(「解説」より)
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