西谷修『戦争と西洋 ― 西側の「正義」とは何か』は、近現代の戦争や国際政治を通して、西洋的価値観に基づく「正義」の概念を批判的に検討した書籍です。著者は、戦争の名目で掲げられる「正義」や「人道主義」が、実際には政治的・経済的利益と結びつくことを鋭く指摘します。倫理や道徳の抽象的議論だけでなく、歴史的事例に基づき、西洋中心主義的な価値観の矛盾や限界を明らかにしており、国際政治や倫理を学ぶうえで示唆に富む一冊です。
大戦終結から80年、この間の戦争の経緯を分析し、
「正義の戦争」が世界に何をもたらすのかを検証する。
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20世紀に世界は二度の全面戦争を経験した。主権国家が並び立つ国際秩序を確立した〈西洋〉が、外部を征服し「世界化」したそのとき、世界中を巻き込む大戦争が起こったのだ。総力戦と化した戦争は核兵器を生み、戦争は人類破滅を招きかねない「不可能」なものとなった。にも拘わらず、世界大戦終結から80年、世界はふたたび全面戦争への傾斜の上に立っている。冷戦終結が世界の平和をもたらすはずではなかったのか? なぜこうなったのかを西洋精神史を参照項に検証する。
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今、世界には再び「戦争やむなし」の気配が蔓延している。〈世界戦争〉以前のように領土的野心をもつ「帝国主義国」や、独裁者の指導する「侵略国家」が登場しているからと。その「蛮行」を許さないため、「自由な秩序」を守るために、抑止に足る軍事力を備え、戦争の準備をしなければならないと。
世界の動静が、そのように世界戦争以前の状況に戻ったのか、あるいは、〈世界戦争〉が起こったということの真の意味を忘れ、その「恐れ」を拭い去り、再びそれに備えさせることで、「現勢」を維持しようとする政治的・イデオロギー的力学があるのか、その事情を以下の考察で解き明かしてゆきたい。------------第一章より
第1章 世界戦争とは何だったのか
第2章 戦争と西洋ーー〈世界戦争〉への道
第3章 「冷戦」の基本構造
第4章 核兵器とは何か
第5章 西洋の次なる「敵」と新しい「正義」
第6章 戦争とメディア
第7章 「テロとの戦争」はいかにして起きたか
第8章 「テロリスト」という非存在
第9章 戦争の「民営化」
[閑話休題]加速する時間の先に
第10章 「アフガン戦争」とは何だったのか
第11章 イラクーー「ならず者国家」の市場解放
第12章 文明のための「衛生的」な戦争
第13章 核の恐怖とテロリズム
第14章 ウクライナ戦争が炙り出す〈西側〉の欺瞞
第15章 イスラエルーーガザ攻撃に見るアメリカとの相同性
第16章 ヨーロッパと反ユダヤ主義
第17章 〈世界戦争〉80年後の世界
[付論]2025年初頭、今、アメリカで何が起こっているのか?
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