物語の毒と品のバランスが神 京極夏彦の名作6選
京極夏彦の作品への深い愛情を改めて実感させてくれる6選。残酷さと情緒、現実と幻想、古と新が見事に融合しています。彼の作品の面白さは、物語の途中途中に散りばめられた毒と品のちょうどいいバランス。毒はじわじわと効いてきて、読んでいるうちに気づかずに引き込まれてしまいます。一方、品の部分は知的な楽しさを提供してくれるので、読むのがやめられません。エッジの効いた毒と優雅な品が、名作へと昇華させるのです。味わい深く、一読しただけでは忘れられない、その魅力をぜひ体験してみてください。
『猿』
「猿がいる」と言い出した同居人。
かすかに感じる、妙な気配。
曾祖母の遺産相続。
胸に湧き上がる不安。
岡山県山中の限界集落。
よく判らない違和感ーー。
ただの錯覚だ。そんなことは起こるはずがない。だがーー。
怖さ、恐ろしさの本質を抉りだす、瞠目の長編小説。
| 作者 | 京極 夏彦 |
|---|---|
| 価格 | 2200円 + 税 |
| 発売元 | KADOKAWA |
| 発売日 | 2025年12月22日 |
『了巷説百物語』
| 作者 | 京極,夏彦,1963- |
|---|---|
| 価格 | 不明 |
| 発売元 | 中央公論新社 |
| 発売日 | 2025年06月 |
『数えずの井戸』
この井戸は、無だ。
円い無を見詰める。
無からは、閑寂とした冷気が沁み出て来る。
ーー冥土から吹く風だ。
無垢な娘と満たされない侍、強欲な女の出会いが惨劇を呼ぶ。鬼才の筆で甦る「皿屋敷」怪談。著者ロングインタビューを収録。〈解説〉小二田誠二
| 作者 | 京極夏彦 |
|---|---|
| 価格 | 5500円 + 税 |
| 発売元 | 中央公論新社 |
| 発売日 | 2025年09月19日 |
『鵼の碑』
| 作者 | 京極,夏彦,1963- |
|---|---|
| 価格 | 不明 |
| 発売元 | 講談社 |
| 発売日 | 2023年09月 |
『書楼弔堂 霜夜』
古今東西の書物が集う墓場。
明治の終わり、消えゆくものたちの声が織りなす不滅の物語。
花も盛りの明治40年ーー高遠彬の紹介で、ひとりの男が書舗「弔堂」を訪れていた。
甲野昇。この名前に憶えがあるものはあるまい。故郷で居場所をなくし、なくしたまま逃げるように東京に出て、印刷造本改良会という会社で漫然と字を書いている。そんな青年である。
出版をめぐる事情は、この数十年で劇的に変わった。鉄道の発展により車内で読書が可能になり、黙読の習慣が生まれた。黙読の定着は読書の愉悦を深くし、読書人口を増やすことに貢献することとなる。本は商材となり、さらに読みやすくどんな文章にもなれる文字を必要とした。どのようにも活きられる文字ーー活字の誕生である。
そんな活字の種字を作らんと生きる、取り立てて個性もない名もなき男の物語。
夏目漱石、徳富蘇峰、金田一京助、牧野富太郎、そして過去シリーズの主人公も行きかうファン歓喜の最終巻。
残念ですがご所望のご本をお売りすることは出来ませんーー。
【目次】
探書拾玖 活字
探書廿 複製
探書廿壱 蒐集
探書廿弐 永世
探書廿参 黎明
探書廿肆 誕生
【著者略歴】
京極夏彦
きょうごく・なつひこ
1963年生まれ。北海道小樽市出身。
日本推理作家協会 第15代代表理事。世界妖怪協会・お化け友の会 代表代行。
1994年『姑獲鳥の夏』で衝撃的なデビューを飾る。1996年『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞長編部門、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2000年 第8回桑沢賞、2003年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年 『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞、2016年 遠野文化賞、2019年 埼玉文化賞、2022年 『遠巷説百物語』で第56回吉川英治文学賞を受賞。
| 作者 | 京極 夏彦 |
|---|---|
| 価格 | 2530円 + 税 |
| 発売元 | 集英社 |
| 発売日 | 2024年11月26日 |
『病葉草紙』
人の心は分かりませんが、 それは虫ですねーー。
ときは江戸の中頃、薬種問屋の隠居の子として生まれた藤介は、父が建てた長屋を差配しながら茫洋と暮らしていた。八丁堀にほど近い長屋は治安も悪くなく、店子たちの身持ちも悪くない。ただ、店子の一人、久瀬棠庵は働くどころか家から出ない。年がら年中、夏でも冬でも、ずっと引き籠もっている。
「居るかい」
藤介がたびたび棠庵のもとを訪れるのは、生きてるかどうか確かめるため。そして、長屋のまわりで起こった奇怪な出来事について話すためだった。
祖父の死骸のそばで「私が殺した」と繰り返す孫娘(「馬癇」)、急に妻に近づかなくなり、日に日に衰えていく左官職人(「気癪」)、高級料亭で酒宴を催したあと死んだ四人の男(「脾臓虫」)、子を産めなくなる鍼を打たねば死ぬと言われた武家の娘(「鬼胎」)……
「虫のせいですね」
棠庵の「診断」で事態は動き出す。
「前巷説百物語」に登場する本草学者・久瀬棠庵の若き日を切り取る連作奇譚集。
病葉草紙 目録
馬癇
気癪
脾臓虫
蟯虫
鬼胎
脹満
肺積
頓死肝虫
| 作者 | 京極 夏彦 |
|---|---|
| 価格 | 2420円 + 税 |
| 発売元 | 文藝春秋 |
| 発売日 | 2024年08月07日 |
ここまで、一部だけにとどまらず、彼の作品をひとつひとつ紐解いてみると、そのどれもが、極夏彦氏の深遠なる思索と洗練された文体から生まれた、日本の物語る文化への傾倒と尊敬、そして畏怖すら感じさせる深い愛情に満ち溢れています。
物語に毒があるからこそ読者は引き込まれる。しかし、そこに品が欠けてしまえば、それはただの壮絶な現実逃避にすぎません。その絶妙なバランスこそが、京極氏の作品がどれもが読み手を虜にしてしまう秘訣なのでしょう。積年の経験が生んだ彼の語り口は、単なる怪異譚や民俗学、あるいは伝奇物の数々をただ描くだけでなく、それらを通した人間の内面や社会問題への見識を我々に問いかけてきます。
京極氏の作品は、一見すると陰鬱で暗い印象を受けるかもしれません。しかしその奥にあるのは常に、人間の生きる滑稽さや尊さ、そしてそれを包み込む世界の美しさや底知れぬ深さ。その独特の世界観と文体が、私たちの心を揺さぶり、己の在り方や価値観を問い直させてくれるのです。
この6選でご紹介した作品は、京極氏の広範で多様な作風がひととおり吟味できる絶好の導入篇と言っても過言ではありません。これを機に京極氏の作品に手を伸ばし、その世界に浸ってみては如何でしょうか。その毒と品の調和を、心ゆくまでご堪能いただけることと思います。
どの作品も興味深く、一度読んだら忘れられない魅力に満ちています。その魅力を存分に味わうためには、言葉を味わい、思索を巡らせることが肝要だと思います。一作一作じっくりと時間をかけて、ぜひその世界に触れてみてください。
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