一穂ミチの『光のとこにいてね』は、まるで長い手紙を読むような読書体験だった。結珠と果遠、二人の少女が出会い、離れ、再会しながら四半世紀を生きていく姿は、静かでありながら、読む者の心を深く揺さぶる。
結珠は裕福な家庭に育ちながらも、母親の支配に苦しみ、果遠は団地で育ち、自由で奔放に見えて実は孤独を抱えている。そんな正反対の二人が、小学二年生のある日、団地の片隅で出会う。その出会いは、彼女たちの人生にとって“光”のような存在となる。
物語は、彼女たちの再会とすれ違いを繰り返しながら進む。友情とも恋愛とも言い切れない、けれど確かに“愛”と呼べる感情が、言葉にならないままに描かれていく。特に印象的だったのは、再会後の会話のぎこちなさと、互いを思いやるがゆえの距離感。大切な人にこそ、素直になれない――その不器用さが、痛いほどリアルだった。
「光のとこにいてね」というタイトルは、まさにこの物語の核心を表している。直接的な愛の言葉ではなく、ただ「あなたが光のある場所にいてくれたら、それでいい」と願う気持ち。それは、相手を縛らず、ただ幸せを祈るという、究極の優しさなのかもしれない。
読後、私は「誰かの光になれているだろうか」と自問した。そして、誰かの光を見失わないように生きたいと思った。
この物語は、人生の中で出会う“かけがえのない誰か”を思い出させてくれる、静かで美しい一冊だった

















