「作家アリスシリーズ(火村英夫シリーズ)」の10作目となる『暗い宿』には、4つの短編が収録されています。
その短編に共通するのは、全て宿が舞台となっていること。
廃業した民宿、沖縄の人気ホテル、温泉地の旅館、そして都心の名門ホテル。
謎だけではなく旅行気分まで堪能できるわけです。
表題作の『暗い宿』の舞台は民宿。
作家の有栖川有栖(アリス)が、ある事情から民宿の看板を出していた以呂波旅館を訪ねると、そこは既に廃業済みでした。
しかし偶然掃除に来ていた女将に頼み、アリスはそこで一泊することになります。
その夜アリスが聞いたのは、スコップで土を掘るような音。
そして後日、民宿の床下から白骨死体が出てきたと新聞に載っていたのです…。
これ以上何かを書くとネタバレになってしまいそうなので控えますが、
白骨死体一つでここまで話が膨らむのか、という感想を抱きました。
『ホテル・ラフレシア』ではまさかの展開に驚かされ、
『異形の客』は不気味な男性客の登場する雰囲気が面白く、
『201号室の災厄』は普段の作家アリスシリーズにはあまり見られないドキドキ感がありました。
どの物語にも見どころがあるのでおすすめの作品です。
作家アリスシリーズを読んだことのない方で、
もし「興味はあるけどいきなり長編に入るのは難しい」と感じているのであれば、
こちらの短編作品から入ってみるのはいかがでしょうか?